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『カラスと京都』『カラスといっしょ』

松原始『カラスと京都』『カラスといっしょ』旅するミシン店

カラスと京都

雑司が谷の「手創り市」を回っていて見つけた本。
そう、以前ご紹介した『カラスの教科書』『カラスの補習授業』の松原始氏の本だ。
雷鳥社で前二冊を編集し、かつ挿絵の「カラスくん」を描いた植木ななせ氏が独立して「旅するミシン店」というお店をはじめられ、手創り市に出展していたのである。
「旅するミシン店」は手作りブックカバーが主な商品だが出版もしていて、それがこの二冊。

『カラスといっしょ』は小冊子で、前半のカラスデータなどは『カラスの教科書』とダブる部分あり。
後半のカラスのQ&Aが楽しい。

『カラスと京都』は著者の京都大学から大学院修士課程の6年間の回想録。
やたら悪戯されることで有名な『折田先生像』を片目に見つつ、キャンパスを中心にヤング松原氏の青春時代が描かれている。
野生生物研究会の部室や授業の想い出などが中心で、青春小説のような甘酸っぱさはあまりないのだが、読んでいると「いいなあ」という思いがこみ上げてくる。
著者は動物学やりたさに四浪して京大に入り、クラスの友人と交流したり、授業に関係のない本を読みふけったり、酒を飲んだりしながらも、自分のしたい学問に喜びをもって踏み込んでいく。
天才ではないごく普通の大学生で、でもやりたいことははっきりしている。
そこがすごく、うらやましい。

「日が昇っている間は思うさまカラスを追い回し、日が沈んだらアハハと笑って安酒を飲む。誰にも、何にも邪魔されない。自分の時間は全部、自分とカラスだけのものだ。金と仕事と業績と将来の展望と明日の保証がないかわりに、大いなる自由がある。」(p301)


自分のやりたいことがはっきりわかって、それをやっていれば他に何もいらないと感じる人が、とてもうらやましい。
自分の話になるが、大学4年間、結構勤勉だった。
「学生の頃もっと勉強しておけばよかった」という感想を持ったことは、ない。
厳しい女子寮にいたが門限を破ったことはなく、語学の授業は予習と復習を欠かさない、高校生のような暮らしをしていた。
バブル経済が終って倍率が上がった教員採用試験にも、現役で合格した。
しかし、その中に喜びがあったかといわれると俯かざるを得ない。
その当時から、勉強をするのも先生になるのも、そうすべきであると親に期待されているからやっていたのだし、そのことから目をそらすために「私は教師になりたい」「私は勉強が好きだ」と頻繁に口にしていた。
学問それ自体を好むのではなく、「お勉強している私をほめられたい」がための行動だった。
あるいは「お勉強ができなければ何の価値もない私」から眼をそらすための。
「大学院に行って研究がしたい」と恩師に言ったとき、
「しの、お前は勤勉だが仮説構築能力がない。研究者には向かないから、採用試験を受けて就職しなさい。勉強なら教師をしながらでもできる」と引導を渡された。あのアドバイスは今でも正しかったと思う。恩師は私の抑圧の構造と、社会から逃避したい心を見抜いておられたのだろう。
こんな動機で職業選択をして、定年まで耐えられるわけもない。大病をして、結婚を口実に5年で退職した私であった。

好きなことを思い切りやる青春の輝き。眩しい思いで読み終わった。

生きとし生けるものが幸せでありますように。

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しの2012

Author:しの2012
女性。
ヴィパッサナー瞑想に取り組んでいます。

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