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すずろなるもの

《二日目のまたまた続き》

食後、いくばくかの作務のあとで買い物に出る。

近所のスーパーに行くつもりだったが、ふと道に迷いたくなって手前で曲がる。

今の家には割と長く住んでいるが、近所のことをあまり知らない。それがわかったのがこのコロナ自粛でうろうろと歩行瞑想するようになってからだ。それまでは道に迷う余裕のない暮らしだった。
普段は用があって外出する。スーパーに行き本屋に行き駅に行く。
何時に出れば何時について、用が済んだら何時に帰るという心づもりがある。
誰も待ってはいない家だが、どうしても家と目的地という二点を結ぶ最短距離をとる。とってしまう。

自宅リトリートに入って歩行瞑想の一環として外に出るとき、そこに目的地はない。
ただ「今、歩いている」と知ることが目的で、どこを歩いているかも、どこに行きつくかも、どうでもいい。
とはいえスーパーなり駅なりをぼんやりと目標にしてはいるが、「最短で要領よく」歩く必要はない。
そうすると、迷うことができる。

知らない道を行くのはドキドキするし、不審者と思われないかという不安もある。スマホを持たないので丸腰な感じもする。
しかし買い物袋を持った普通のオバサンだから不法侵入でもしない限り通報もされまいし、財布は持っているからいよいよとなったらタクシーに乗ればいい。

今日も曲がったことのない角で曲がってみる。
細い路地をうねうねと歩く。
アスファルトやコンクリートの継目に苔が生えている。東京の苔が美しいのはこの季節だけだ。
他人の庭の下生えの、小暗い陰にどくだみの花が白く浮かんでいる。紙風船のような桔梗のつぼみが膨らんでいる。
朽ちかけた木造屋の窓、外から斜交いに材木を打ち付けてある。ところどころ壁の板が落ちて、打った黄土が覗いている。家の中は闇だろう。畳が蒸れてうねっているだろう。
庭木がトンネルのように前の道に覆いかぶさっている家。まだ新しいのに人の気配がない。二階の窓まで蔓草がはびこっている。窓の内側にあるもの、よくみてみるとどこからか入り込んだ同じ蔓草だ。
(主なき家にはすずろなるもの入りきたり…※)などと思いつつ路地を抜けると、見覚えのある車道があった。

黒い犬というのは、梅雨時には一層つやつやして見えるものだな。
テリアっぽい黒い巻き毛の犬とすれちがう。飼い主が好きで好きでたまらないらしく、上ばかり見て足がもつれそうなほどちょこちょこと歩いている。

ようやくスーパーにたどり着き、買い物をしてまた裏道をたどり帰宅。


※主ある家には、すずろなる人、心のままに入り来ることなし。主なき所には、道行き人みだりに立ち入り、狐・梟やうのものも、人気にせかれねば、所得顔に入り住み、こだまなどいふ、けしからぬかたちも現るるものなり。『徒然草 第235段』

生きとし生けるものが幸せでありますように

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プロフィール

しの2012

Author:しの2012
女性。
ヴィパッサナー瞑想に取り組んでいます。

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