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カメラは見た!

友人とお洒落なカフェでお茶をしていた時のことである。

その友人は最近愛猫を亡くしたばかり。
保護猫出身だがライムグリーンの目を持つ三毛のフカフカ長毛、陽気な性格でとても彼女になついていた。
今時、猫の14歳というのは高齢のうちに入らないらしいが、ちょっと様子がおかしいというので病院に連れて行ったら病気が見つかり、ほんの半月ばかりであっという間に具合が悪くなって死んでしまった。

仕事も忙しい中、夫婦そろって必死に看病した疲れもまだ癒えてない様子の友人が、ふと気づいたように話しだした。
「ねこ子(仮名)が具合が悪くなってから、夜の間の様子を確かめるために猫ベッドのそばに監視カメラをつけてあったんですよ。
そこにちょっとおかしなものが映っていて……」

え、怪談?心霊現象?
私がそういう再現性のない現象に冷淡なのは彼女も知っているはず。というか、二人そろってわりと辛辣味のあるリアリストだから気が合っていると思っていたんだが。
しかし大切なものを亡くした時に価値観が揺らぐというのもあることだし……。
と話を聞いていたら、奇妙なことを言い出した。

「ねこ子が死んだ朝、交代で寝ていた私は夫の『ねこ子の様子が変だ!』という声で慌てて目を覚まして、猫ベッドのところに駆け寄ったらもうねこ子は断末魔で……と思ってたんです。
そのカメラの画像も、もう見るつもりもなかったんですけど、ねこ子のお弔いも済んでちょっと落ち着いて、数日前に再生してみたんですね。
でも長時間の録画はできなくて、再生してみたら死んだ朝からの動画が録画されていたんですけど、そうしたらそこに」

「そこに……?」

「私が映ってたんです」

「は?」

「なんか、フツーに起きて、窓のカーテンあけて、コーヒー飲んでる私が映ってたんです」

「え、ちょっと待って。さっきは飛び起きたって話だったよね」
「そう。『飛び起きてベッドに駆け寄ったら、もう臨終で、そのまま涙にくれるお見送り』だったって思ってたのに、実際はその10数分前に起きて、コーヒー飲んで、普通にしてたんです。
でもその記憶が消えてたんですよ!」
「うわー、それ、なんか、ねこ子ちゃんの霊魂が映ってるとかいう話よりスゴイ!恐い!」
「でしょー!人間の記憶なんて、その後のショックで簡単に上書きされちゃうんだって実感しましたよ。
最初自分が映ってるのを見ても、何が何だか理解できませんでしたもの」

「法廷やなんかでの目撃証言も、自分がこうだったと信じている記憶も、本当に信用できないものだなって思いました」と彼女は言っていたが、全く同感である。
「自分とはこうだ」という認識のもろさを感じさせてくれる、貴重な話だと思った。

(こういう気づきのない状態の心のことをアビダンマでは「有分心」というそうだ。
気づきのある状態の心が「路心」)

生きとし生けるものが幸せでありますように。

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しの2012

Author:しの2012
女性。
ヴィパッサナー瞑想に取り組んでいます。

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